劇団AUN 第23回公演 『桜散ラズ…』 初日お伺いしてきました

相変わらずタイトルに全部書いちゃってここになに書けばいいかわからなくなる系のいきもの、しずこ ( @cigarillolover ) です!!

6/22(水)~7/3(日)まで上演されまして、すでに土日のチケットは売り切れですが平日はまだまだお席があるとのこと。ネットで買える前売り券は「上演当日の0時まで・現地支払い」で予約できますよ!! べんり!!

 

 

市村直孝さん作の、「日本人と戦争シリーズ」第三弾になります。相変わらず、「過去と未来と複数の視点を行ったり来たりしながら」「否も応もなく、戦争というものに巻き込まれた市井の人々」の、「こっからここまでを切り取ってくる」御本でした。

今回の「行ったり来たり」役は、松本こうせいさんの演ずる和田健一さん。前作『黒鐵さんの方位磁石』のときとは少し体裁が異なり、舞台上では「ケン坊」としてその和田健一さんの若いころが別途存在しまして、こちらは山田隼平さんです。

この現在の和田健一さんはアルコール依存症で、一応無料の自助グループに顔を出してはいるものの、まったく断酒のできていない状態なのですが、さて、そんな彼の過去にはなにがあったのか……そしてそんな彼の未来はどうなっていくのか……。

ちなみにこの和田健一さんの、父方の祖父が吉田鋼太郎さん演じる和田鶴松さん。そして母方の祖父が大塚明夫さん演じる栗山安成さんです。なにこのぜいたくな家系!!

 

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役者さんを役柄のイメージで固定するわけでは決してないのですが、それでも自分の中で松本こうせいさんの印象が『有馬の家のじごろう』の時の生真面目そうな2代目さんでしたので、今回のアルコール依存症で酒瓶を抱えたままの姿はそれだけでなかなかショックな感じがありましたネ。

そして、そのアルコール依存症の健一さんがでれんでれんになりながら眺めているのが、彼の生家である「和田鉄工所」の40周年。ただしこれは、「彼の中で幸福だった唯一の基点」というわけではなく、まあいろいろあって、本人は実家に対して(というか実父に対して)反抗的な状態です。

と、ここまでは舞台背景であって「ネタバレ」という部類には触れない……と思うのですが、まだまだ日程的に折り返しにもなっておりませんので、本筋について触れるのはここまでにしておきます。一応、このあたりは冒頭の10分15分の状況説明でしかないので、そういう点ではご安心ください。

 

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んで、わたし、これTwitterの方では先に触れたのですが、ここのね!!! 和田鉄工所のシーンね!! すごい好きなんですよね!!

この鉄工所は家族経営で、第2次世界大戦に整備兵として出兵し、その後復員した和田鶴松さんの興した工場なのですが、息子の正治さん(北島善紀さん)、広嗣さん(谷田歩さん)の他にベテラン工員の鈴木源三さん(岩倉弘樹さん)、そしてもうひとり笹川良介さん(谷畑聡さん)が社員として働いているのです。

で、ここがすごく巧みだなあと思ったのは、「40周年」というシチュエーションにあわせて、会話や態度の中で自然に「和田鉄工所」の中の様子を見せてくれることなんですね。

特に谷畑聡さん演ずる笹川良介さんは、人の顔を覗き込みながらダブルピースでイエーイイエーイってやるようなお調子者っぽい感じの人なんですけど、その良介さんに対する反応が「いい年してこいつは」ってんじゃなくて、「若いのはこれだから(笑)」っていう感じがあるんですよ。

でも、別に良介さんは若いわけでもないし、本人も「若手」って言われて明るく否定してる。じゃあこれがなにかって言うと、「あ、良介さんはずいぶん若い頃からこの鉄工所でお世話になってて、そんでまわりの印象が、まだその “良介は若いな” ってののままなんだね」っていうのを感じるわけです。

 

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んでもって、そのお調子者っぽい良介さんも、社長の鶴松さんがコメントしますよって時になったら、額に巻いてる手ぬぐい? バンダナ? をするっと外して社長に向き合うわけです。

わたしここでむやみに感激してしまって。

「目上の方がご挨拶されるのだから、帽子の類は外す」っていうマナーが残っている時代だなあ、そしてそれが自然に身についている良介さんすごくいいなと思いますし。そういった点も含めて、「ずっとかわいがられて成長したんだろうな」っていうのが察せられるポジションなのがまた、すごくいいんですよね。

このへんが大仰ではなく、説明っぽくもなく、「いや40周年めでたいねめでたいね」っていう雰囲気でみんなでわちゃわちゃしているシーンの中で補完されてる。こういうところがほんと素晴らしいなと思います。

 

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あと、『有馬の家のじごろう』のときも思いましたが、「水」をそのまま使ってくださるのほんと好きです。

もちろん舞台は舞台ですから、「そこにはないものをあるように振る舞う」っていうのも技術だと知ってはいますけれど。じごろうのときの、シンとした空間に聞こえるお酒を注ぐ音……ですとか、今回の「いやーおつかれおつかれハーくたびれたー ”プシュ” アーーーーーー」っていうこの ”プシュ” がとっても大事!!

お見送りの時に聞こえたんですけど、あれはノンアルコールビールの缶をそのまま、銀色の用紙でコーティングされているらしく、要はほんとにビールを開けている時の「プシュ」なんですよね。その「プシュ」で感じる生々しさ、リアルさがぐん!! と増すので、そういうところがとっても好きです。

さらに言うと、健一さんはお酒に逃げてしまったわけですけれども、その同じ舞台・同じ世界観の中で、普通にお酒をいいものとして扱ってる。そのバランスがね、とってもいいなと思います。

しずこがのんべなだけじゃねえ? って、自分でも思います。その通りです。

 

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さてここから、具体的なネタバレというものではなくとも、劇全体に対する感想なのですが。

複数の視点の物語が交錯しつつ、過去と未来も交錯しつつ積み重ねられていく物語がいったいどうなってしまうのか……という筋立てではあるものの、個人の印象としては「別にどうにもならないお話なんだな」と思いながら見ていました。

こういうと、なんだか悪く言っているようにも聞こえるかと思いますが、決してそうではなく。

物語が最初から最後まで流れても、変化も、救いも、進展も、そこまで大げさなものはない。わかりやすく差し伸べられる救いの手もなければ、状況をがらっと変えてくれる強者も現れない。どんでん返しもなければ大団円とも言いがたい。

ただ、ある人の人生の「こっからここまで」を見せただけ。A地点からB地点へ移動しただけ。

けど、そこにはほんのりと日の当たった瞬間が確かにあり、その日の当たったところがほんのりと温かいと感じるためにはそこまでの過去が必要であり、ただ日が当たったことがじゃあなんなのさ、と言えなくもないけれど、でもそれは絶対に「絶望」なんかではないっていう、たったそれだけの優しさ。

それがなんというか、日本人としてのこちらに沁みてくる御本だなあ……と思うわけですよ。

 

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さてさて、触れたいところは他にもたくさんあるのですけれども、ちょっと現時点でいつもより文字数!! ってなっていますので、一旦ここで切ろうと思います。

もうちょっと「オススメデスヨオ」って文章にしたかったですけど!! ムリだった!!

でもいつもの「こここうすればよかったのに魔神」がこういう文章を描いてるっていうところで、察していただければいいなと思います。

 

 

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