トム・ハンクス主演 『ターミナル』 感想③ 引き続き気になったところと、あと好きなところ

 

 

この映画はトム・ハンクスでよかったんだろうなあというのはすごく思います。彼の「徹底して悪人じゃない感」で、目的もわからず言葉も喋れない(※英語が喋れないだけなんですが、彼はクラコウジア語すらほとんど発しませんし、発したとしてもそれに字幕がつかないので)=どんな人間かわからない、というのになんだか味方したいような気分にさせられるっていうのはもうすごいな、と。

もちろん視聴者は「このトム・ハンクスが主役だから」って目で見てはいますけれど、それにしてもこの手を差し伸べてあげたい感はすごい。

ただ……描写的にちょっと、知能の発達に障害のある人みたいに見えてしまうのが気になるといえば気になります。おそらくコミカルに描こうとして結果そうなっている部分もあるのでしょうが、それにしたって他国で立派に仕事もしていたであろう成人男性が入国審査で別室に連れて行かれてもすっごく呑気だとか、トイレの手洗い所で髪や体を洗うことに抵抗がなさすぎたりとか……。

放置カートを集めて、デポジットの25セントを回収するのだって、そりゃ生きていくためとはいえ最初はためらいとか抵抗があってもよくない? なんというかそういうのが全体的に希薄で、当たり前のようにそういった行動を取り始めるので、行動力があるとかそういうことより基本的な常識っていうのがわからない知能の方なのかなって見えるんですよ。

他人のパッキングを手伝おうとして、力任せに旅行かばんをぶち壊してしまったりとか、それに対して謝罪するより先に食料のチケットを追いかけたりとか……。トム・ハンクスでよかったとは思っていますが、この映画見ている間ずっと『アイ・アム・サム』のときのショーン・ペンを思い出していました。

そっか。この映画『アイ・アム・サム』か。じゃあファンタジーだな。

 

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ディクソン側というかアメリカ側が彼に必要なことを説明しようとしないのもこの印象に拍車をかけています。だって相手は他所の国でとはいえ、立派に生活されてる成人男性でしょ。たとえ言葉が通じなかったとしても、通訳がすぐに容易はできなかったとしても、もっとなんらかの歩み寄りはできたと思えてしょうがない。

それこそ辞書で単語を引き引き説明したりさ。ロシア語話者とそのまま話せるレベルなのだから、ロシア語の辞書でいいじゃないですか。空港内になかったら買いに行ったっていいじゃないですか。なぜ充分な説明をしないまま放り出すの? あれだけの事態が起きているのに。

ディクソンは、「英語を喋れないからわからない」っていう事実ではなく、「この男に理解する能力がない」と突き放しているようにも見えます。

そしてまたブラック・ジャックの文庫版未収録エピソード「しずむ女」を勝手に思い出していました。

というかね。ロシア語とクラコウジア語がほとんどそのままで会話できるというならね。

ロシア語の通訳用意すればいいんじゃないですかね?????

はあ~不思議。

 

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父親のために薬を持ち帰りたいロシア人が拘束されてしまったところで、ビクターが機転を利かせて「ヤギの薬だ」と言って、無事薬を持って帰れるようになる……というシーンは結構好きです。

が、それも「なぜロシア語というものすごいメジャーな言語の通訳が空港内に一人もいないのか」「通訳ではなくても誰か喋れる人がいないのか」「なぜ正規の空港職員ではなく、一般人であるビクターを呼びだそうと思ったのか」など、ほんのすこしでも冷静になるといろいろありえない感じなんですよね……。

あの場で、自分の首に刃物を当てるまでエキサイトしてしまった人に、一般人を差し向ける。それであのロシア人がどうにかなってしまったり、ビクターが怪我をしてしまった場合、「無国籍者を放置」以上に大問題になったと思うんですけど。

あと、あの場でディクソンが嘘でも騙されてくれないのが気になりました。ビクターに対して苛ついてはいたでしょうけれど、彼が嘘を言っていると思ったなら通訳を呼んででも裏を取ればよかった話で、あんなに簡単にカチ切れて異常行動を起こすようなシナリオである必要があったのかな~とは思いますよね。

 

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ていうか「自分に恥をかかせた異国人の指紋をコピーしまくる」ってなんか……かなり発想がヤバくないですか? しますか? 普通。犯罪者扱いじゃないですか、あれ。しかも、ビクターは別にディクソンの部下でもなんでもない。部下の指紋ならコピーしていいって意味じゃないですけど、なんでそう上から押し付けて自分の思い通りになると思っているのか。

一旦冷静になると、ディクソンがかなりヤバい人間ですよね……。最後にサインを拒否するところや、特に正当な理由がないのにビクターの自由を認めず帰国させようとするところも、「どういう権限があってどういう法的な理由であの指示をしているのか」が一切不明で。

上でも書きましたけど、「なんの落ち度もなくて法律を犯してもいない善良な一般人」に対して彼がああいう態度を取れる「根拠」はどこなのか……って考えると別に根拠なんてなさそうだし、やっぱ私怨か~怖いな~ってなりますよね……。

あれだけの状況に陥った一般人を、私怨でああまで締めあげたような人が、出世がちょっと遅れた以外になんの罰則もなく警備局長をやっているっていうのが物語とはいえ、恐ろしいです。

 

 

 

 

 

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