『その女アレックス』 ピエール・ルメートル 感想

以前世界陸上で「日本の○○、隣のレーンはフランスの2メートルです!!」って実況がいうから「なによ……失礼ね……ちゃんとお名前よんであげなさいよ……」っておこおこしてたらルメートルだったっていうね

アッこんばんは、しずこ ( @cigarillolover ) です!!

 

 

さてさて前回あらすじを書かせてもらいました『その女アレックス』ですが、正直に申し上げますとわたくしこの作品、最初から最後まで普通に読んではいません。

もっと言うと全文きちんと目を通しているかというとそれもしていません。ちゃんとお金を出して買ってるんだけど、途中でどうでもよくなったというか。

あまりにも最初の、アレックス監禁シーンが長くてですね。描写に疲れちゃうっていうか、しらけちゃうんですよね。

ミステリに普通の小説を読む時と同じルールを適用しちゃいけないかもしれませんが、アレックスが何者なのかもわからない、感情移入できるほどの描写もない、でも事件は発生してとにかくひどい目にあってる、それを延々描かれる……それってただのグロ描写であって、なんというか小説じゃないように感じてしまったんですよ。

しかもアレックスを謎の女のままにしている関係で地の文ですら時折あいまいになっているというのに、残酷なシーンについては長々書いているっていうこのバランスがなんというか……ね。

 

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しかもアレックスが何者なのかわからない、どうしてこんな目にあっているのかもわからない、って状況のまま、メリーゴーランド形式でカミーユ警部側に切り替わる。敢えて希薄にされたままのアレックスのキャラクター性とは正反対にカミーユ警部界隈はそこそこ濃くて、そちらの情報が詰め込まれる……。

冗長になるので書きませんでしたが、このカミーユ警部の母親は「超ヘビースモーカーで著名な画家」で、そのタバコの害でカミーユ警部は身長が140cm台であると。そして自らにも絵の才能があるがゆえに、母親に対して複雑な感情を抱いているんですね。そしてその母親の遺した作品を売り払ってしまおうと考えていて……でも実際に売ってしまってからはそれを後悔したりもしていて……みたいな話がちょくちょく挟み込まれます。

これがテンポを悪くしているとは思いませんが、アレックスの描写と温度差がありすぎ。ひとつの作品として全体的に眺めた時には、序盤のアレックス監禁描写はもっともっと抑えめであったほうがバランスはよかったと思います。

 

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あとはなんというか、むやみに悲惨だよなと。そりゃ事件の話ですから事件が起きないと書けないんですけど、それにしたってアレックスにしろカミーユ警部にしろよくもまあここまで……。ほんとにここまで必要だった……?

同情させたいのかなんなのか、作者には意図があるのでしょうけれど、そういった感情が動く前にここまでする作者に対してひいてしまう。これはわたしがミステリ慣れしていないからかもしれませんが、ちょっとあんまりだなあと。

特にアレックスに関しては、「謎の女」というスタンスを徹底するためか情報を出してこないまま話が進むわけですよ。情報がないままにひどい目にあって、そこから逃げ出したかと思ったら気の良さそうな人たちをひどい手段で殺していく。

アレックスのことをどう思っていいのかわからないまま話が進んでいくんです。

もちろんこれもひとつのテクニックなのでしょうけれど、いつまでもアレックスをひとりの人間として捉えることができない状態でなにが起きても「ああそういうお話なのね」としか思えなくなる。なので、あとになって「実は悲惨な過去がありまして……」って新情報が出てきたりしても「ああそういうお話なのね」という “認識” はするけれども、それで感情が動かされるってことはないんです。

まあこの内容の話で、アレックスの内面にまで踏み込んで行ったら話があっちこっちしちゃうとは思いますけど、だからといって人間味を感じさせないまま最後までつっぱしってそれが正解だったのかと言われると、ちょっと首を傾げてしまいました。

 

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あとこの作品、大どんでん返しがありますよ~っていうのがウリらしくって、帯とかにもいろいろうたっていたらしいんですけども、個人的にはそこまで……。なんというか、「予想外の展開に!!」って言われましても、「そりゃあ、2つの話をあえてシャッフルして出してきたら先は読めないし、どんでん返しに見えますわいな」っていうだけの話。

むしろ、「一本のお話できちんと “必要性のある” どんでん返し」を丁寧に組み立ててあるあの話やあの話と比べてしまうと「こんなの予想外でもなんでもねえ、どんでん返しでもなんでもねえ」って思ってしまいます。

ひとつの巧みに練られたストーリーというよりは、巧みに練られたストーリーに見えるようなテクニックで提示されただけ。それが悪いとは申しませんが、そんなにあおり立てることでもないでしょう。

 

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あとはね!! アレックス死亡シーンの、あえてぼかした描写!!

それまで後出しはあったかもしれませんけど、それでも起こったことは淡々と書かれていたのに、急にあそこだけ幻想的になるというか、事実の描写じゃなくて印象の描写になっている。

それでそのあと「実はあのときのことはこういうことでしたよ」って言われても、そのやり方はやっぱ卑怯だよなあ、と。

 

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というわけで、個人的な評価としては5段階評価で星2かそのくらい。少し遠回りして、駅にあるフリー本棚みたいのに寄付して終了しましたとさ。

#他にこの感想を書くところがないのでここに追記してしまうと、前作の『悲しみのイレーヌ』がカミーユ警部の奥さん存命時の話と知って、なんか余計にダメになりました……。

自分が生み出したコンプレックスまみれの登場人物が、それでも前を向いて歩いていけるようになった原因の女性を、1作しっかり書いておいて、そのあと殺したのかと思うとなんかね……もうね……。

 

 

 

 

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