田中圭一さんの『ペンと箸』の面白さ ② その面白さは、田中圭一さんがマンガ家だからこそ

田中圭一さんの『ペンと箸』の面白さについて勝手にうだうだ言うエントリ第二弾です。

 

 

さて、前回は「焦点のあわせかたがとても秀でていて、料理で言ったら下拵えがとてもお上手」的なことを申し上げたわけですが、さらにもう1点『ペンと箸』が面白くなる決定的な要素がありまして、それがタイトルにも収めたように、「田中圭一さんがマンガ家だから」という点なわけです。

「マンガ家だからマンガが上手で当たり前」っていう話じゃないですよ。

そうではなく、マンガ家というお仕事を選んだ人、マンガ家という職業人そもものについての理解が、大前提として田中圭一さんの中にあるじゃないですか。そこで、各作家さんのエピソードについてとてもフラットに受け止めてフラットに表現してくださっているんですよ。

「描く」ということの大変さ、「描き上げる」ということの偉大さが空気の中にあるから、ことさらにそこをフォーカスしない。「描く人間とはいかなるものか」ではなく、「描く人間とはこういうものぞ」という空気であり、こちらもその「こういうものぞ」の空気を前提として読むことができるんです。

 

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『ど根性ガエル』の作者・吉沢やすみさんの回なんか……もう……「描ける人」が「描けなくなる」怖さというのを知っている、それがどういうものかを知っているからこその描写だよなあと。ご子息の吉澤康宏さんが、当時の吉沢やすみさんについて触れた時も、やはり「エー」という「第三者の反応」ではなく「うわあ つらそう」と頭を抱えるという、同業者としての「理解」なわけですよ。

この回で、進行アシスタントである作中の女の子が「エー描けなくなっちゃうなんてことあるんですか!!」って反応をしたらだいなしだと思うんです。それが読者に寄るってことだとしても。

そういう意味で、逆に「業界外の人が抱くかもしれない驚き」については触れないぶん、読者との間にはちょっとした距離すらあるかもしれません。でもそれがいいし、それでいいと思う。

ちなみにこの回は、描けなくなり失踪した、という部分は共感を交えつつあくまでさっと流し、近年の吉沢やすみさんに大きくフォーカスを当ててすばらしい余韻のままひいていく、あの構成がまたすごいなと思います。正直泣きます。泣けそう、泣いちゃいそう、ではなく、あの優しさと間と視点がもう……正直泣きます。

 

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というわけで、身も蓋もなくまとめると「ウッソーホントーシンジランナーイ」の介入しない「大人のマンガ家による・マンガ家とマンガ好きな人のための・大人のマンガ、『ペンと箸』は無駄な盛りがなくてとっても美しいしとっても面白いよ」ってことです。

サイトで無料公開されておりますので、是非。

あと、この『ペンと箸』から田中圭一さんに入られて、他の作品を読まれてショックを受けられたとしても当方は一切の責任を持ちませんので悪しからず。個人的には最初期の『ドクター秩父山』が今でも一番面白いよ。

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】最新回からの一覧はこちら

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<個人的に好きな回>

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第六話:ジョージ秋山とカレイの唐揚げ

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第八話:「ど根性ガエル」吉沢やすみと練馬の焼肉屋

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第13話:『アストロ球団』中島徳博とゆずごまラーメン

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】第五話:西原理恵子と鶏の唐揚げ

 

 

 

 

 

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