田中圭一さんの『ペンと箸』の面白さ ①

ぐるなびさんが運営する『みんなのごはん。』という食に関するポータルサイトで連載されている、田中圭一さんの『ペンと箸』がすっごいおもしろい……というか興味深いんですよ!!

 

 

まずコンセプトが面白くて、「著名な親を持った子供」に焦点をあて、その「子供に親の好物を紹介してもらう」という流れになっています。

ここでの著名人とは、マンガ家さん。

そしてその子供さんたちの視点で語られることで、「家庭人としてのあのマンガ家さんはどんな人なのか?」「おうちではどんな感じなのか?」というような好奇心も満たされつつ、大ヒット作家さんたちがとても身近な存在に見えてくる、そんな作品です。

 

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ていうかね、以前から手塚治虫さんや本宮ひろ志さんのタッチを取得されていたのは知っていたけれども、この『ペンと箸』では登場される作家さん・そのお子さん含め大半が、その作家さんのタッチで描かれているというこの技!! この味わい!! 芸達者な感じ!! うう素晴らしい。怖いくらい。

しかしそれよりわたしが感心してしまうのは、なんというか、この作品に対する田中圭一さんの「ポジション」なんですよね。本当のすごさはその芸達者感の方じゃないんです。

若干偏見があるかもしれませんが、インタビュアーによってはインタビュー対象(インタビュー成果)をことさら大きく見せようとするタイプがいるじゃないですか。

たとえばある程度その界隈にとって常識なことについて「へえーすごいですね」とか「エー知りませんでした」とか「嘘みたい」「ホントですか」「そんなことあるんですか」って、とりあえず驚いて見せるタイプ。

それも話術のひとつだとは思うんですが、そういうインタビューって、その界隈を知っている方にしてみると正直シンドイんですよね。そこを盛らなくていいから、もっと切り込んでくれよって。せっかくの機会、せっかくの紙面なのに、盛り上げるのはそこじゃないだろって思うんですよ。

……という点において、田中圭一さんの「マンガ家」としてのポジショニングがとても適切なんだよなあって思うんですけど、これ伝わるように書けてます?

 

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もちろん『ペンと箸』の中で進行役である田中K一さんも驚きますよ。でもそれって、マンガ家としての部分に驚くわけじゃないんです。

手塚治虫さんの回で田中K一さんが驚くのは、「手塚治虫さんが週刊連載をピーク時には10本以上抱えていてその状態でテレビアニメも作っていた」ことではなくて、「週刊連載をピーク時には10本以上抱えていてその状態でテレビアニメも作っていた手塚治虫さんが、それでも家族サービスを欠かさなかった」ことの方に驚いているわけです。

ここがとても重要なんです。

手塚治虫さんの話をするときに、インタビューを受ける側がまずその仕事量の多さという大前提から話をしなければならなかったり、インタビュアーその仕事量の多さに驚いていたりするようでは、限られた時間・限られた誌面で伝えられることが大幅に目減りしてしまう。

そこを、がさっと削って、その前提はセリフとしてフォローしつつも、驚くべき(目立たせるべき)焦点をすごくあわせてある。それが見ていて心地いいんですよね。

 

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ちなみに以前、手塚治虫さんの元アシスタントさん複数名が登場するトークショーにお伺いしたことがあったのですが、こちらがまさに悪い意味での典型で、元アシスタントさん側が前提としてさらっと流そうとしているところにインタビュアーさんが大げさに反応したり食いついたりすることで話題がスライドしていってしまうパターンを延々見続けたことがありましてね。

誰かを褒めるために誰かをくさしちゃいけないですよ……でもお金をとっているショーですらそういう悪手がまかり通っている中で、無料で拝見させていただいているこの作品で正しく焦点があたっているのがほんとうにまぶしい。

そういう意味で、作品に臭みがないんですよ。下拵えがとても上手なの。こちらはそれに気づかずに、さらさらっといただいて、普通に満足して、ああおいしかった……なんだけれど、あとから「同じようなほかの料理」に触れたときに「あっあれってすっごくおいしかったんだわ」って気づく感じ。「あんなにおいしいの、当たり前じゃなかったんだわ」って。

……というわけで、田中圭一さんの『ペンと箸』とてもおすすめなんですが、おすすめポイントがもう一点ありまして、次はそのあたりでも。

【田中圭一のペンと箸-漫画家の好物-】最新回からの一覧はこちら

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