業田良家さんの『自虐の詩』にはあきらかにおすすめ版があってだね

タイトル通りでございます。

マンガ好きにとってはある種の話題作であったように思う『自虐の詩』(※読みはじぎゃくのうた)ですが、映画化にあたって全編収録の愛蔵版が発売されています。

ですが、読むならこれじゃないほうがいいんじゃない……? こっちがおすすめじゃない……? というかむしろおすすめの編集版があるじゃない……!!

というわけでそちらの紹介です。

 

 

あ、こんな序文で始めておきながら、左の画像は愛蔵版です。しかし愛蔵版はファンアイテムというか……うん。作品として読んだときにできる「隙」があるのですよね。

物語の主役は幸江さんという、すっと通った鼻筋とその側にあるホクロが特徴的な女性です。前半は、チンピラで働かないヒモ旦那にひたすら邪険に扱われながらひたすら幸江さんの苦労話。

ここを真面目に受け止めすぎると前半で充分ツラくなってしまうかもしれませんが、まあテンプレ芸くらいの気持ちで読んでいればいいかな……とも……。

その合間合間に、なにもしない旦那(ちゃぶ台返しとギャンブルならやる)とのアパート一間暮らしの様子が描かれていきます。

幸江さんはそれでもそんな旦那を愛していて、ことあるごとに「愛してると言って」とねだるのですが、これは作中一度もかなうことはありません。むしろ壁の薄いアパートで、となりの大家さんに聞かれてその都度笑われるレベル。

正直、これずっとこんな感じなのかなぁずっとこれ見せられててなんなんだろうなあこれが上下巻あるのか……これが……? こういう芸か……? と思いながら読んでいたのですが、後半様相が変わって参ります。

幸江さんも旦那も昔は羽振りがよく、水商売の女とヤクザ(?)として出会っているのですが、さらにそれ以前の幸江さんの過去が語られていきます。

この過去をここで語ってしまうのはあまりに無粋なので、あらすじの説明はしないんですけれど、この過去からの一連の流れが……つらい、つらいの連続のような、どこか遠くの話すぎるような、でもわかってしまうような、また業田良家さんの絵柄故の淡々としているようなそれでも客観的になりすぎるのを許してくれない感じが……。とにかく引き込まれますというより、どちらかといえば巻き込まれます。

そしてそして最後に、この幸江さんの人生というのはなんだったのか、生まれてくるとかそういうことってなんなのか……という大きな総括がきてこの話は終わるわけです。

正直、そのラストにあまりに大きな話がきちゃったなあという感じはありますが、その前のね。クライマックスがあまりにも……!!

 

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で、今まで「おすすめの版」じゃなくて「自虐の詩のおすすめ」になってしまっておりますが、話を戻しますとおすすめはむしろこちら。

 

 

この文庫本サイズの編集版。これが絶妙なのです。じゃあなぜそれに気がついたか? というと。

先に述べたように、この文庫版は「未掲載」の話も結構あります。ですが、それがいいんです。それこそがいい。

文庫版は、幸江さんのつらさが積み重なって、それでも幸江さんにとっては、必死に働く理由になる旦那さんがいて、少なくとも幸江さんは旦那のことが大好きです。それだけ。一方的だけど、それだけ。

ラストで幸江さんが自分の人生に答えを見つける展開を知らなくても、この幸江さんの人生ってなんなんだろう、そういう疑問が読者側に湧きかねないくらい。

だからこそ後半のクライマックスが生きてくる。ラストのモノローグが生きてくる、わけです。

じゃあ愛蔵版はどうなのか、というと。エピソードが多い分、「ああなんだ、幸江さん結構幸せだな」って、見てるとわかっちゃうんですよね。

 

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だからといって、予定調和に感じてしまうほど後半の展開はやさしくはないんですが、でも「幸江さんなんなの……大丈夫なのこの人……」と思いながら読んでいてあのラストに突入するのと、「アッ幸江さん案外大丈夫そうだな」って思ってあのラストに突入するのって、衝撃とか読後感がかなり違うんです。

……というわけで、個人的に『自虐の詩』は文庫版で読むのがおすすめ。あと、今後『自虐の詩』についてふれることはそうそうないと思うので、もうひとつ個人的なことをついでに言ってしまうと、

映画版『自虐の詩』のビジュアルを見たときに「アッ仮面ライダーZXっていうか村雨良」って思いました。わかるひとだけわかっていただければと思います。

 

 

 

 

 

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